酒の製法を知る

1 精米 米を削り、中央部のデンプン質を取り出す

普段私たちが食べているお米の表面は、日本酒にする場合は雑味 になります。その為、中心部のデンプン質「心白」を残すよう、 精米機で削っていきます。ですので、日本酒用に精米したお米は 小さく、丸くなります。

★ワンポイント:玄米の表面を削り、残った重量の割合が「精米 歩合」として瓶に表示されます。数値が少ないほど多く表面を削 った事になります。

(写真:菊勇株式会社提供)

2 洗米・浸漬・蒸米 米を洗い、水を吸わせ、柔らかくする

心白まで精米した米は、もろく吸水も早いため、細心の注意が必 要です。丁寧に洗米した後、時間を決めて水に漬けます。精米・ 浸漬した米を蒸すと、デンプンがα(あるふぁ)化(やわらかい糊 状になる)し、麹菌の根が米の中心部まで届くようになります。 よい麹をつくる為には「硬すぎず・柔らかすぎず」の蒸米を準備 する必要があります。

 (写真:楯の川酒造株式会社提供)

3 製麹(せいきく) 蒸米に麹菌を繁殖させる

蒸しあがった米を、室温を35度ほどに保った部屋に運び、均一に広げて冷まします。そして、麹菌の種「種 麹」をふりかけ、蒸米の上で繁殖させます。何度も米を混ぜては状態を確認する、酒造りで最も重要な作業と されます。2日ほど経つと、米は白くふわふわとした麹菌に覆われます。この状態が「麹」です。

★ワンポイント:麹菌の持つ「酵素」は、お米のデンプンを分解し、糖分に替えます。後の 過程で、糖分は酒母の酵母により更にアルコールへと変わります。

4 酒母(しゅぼ)造り 糖分をアルコールに替える為に必要な「酵素」を大量に作る

糖分を発酵させ、アルコールとなるために必要な「酵母(イ ースト菌)」を作ります。酵母は日本酒をつくる為に大量に 必要なので、水・麹・蒸米を使って培養します。酵母が大 量に作られた状態の物を「酒母」または「酛(もと)」と呼 びます。 通常は乳酸(酒母に入り込む雑菌類を退治する)を入れて 早いスピードで培養させる「速醸もと」ですが、空気中の 乳酸菌を取り込んで、自然に培養させる方法を「生もと造 り」と言います。生もと造りを行う際、米・麹・水を混ぜ

てすりつぶす「山卸し」と言う工程がありますが、技術の進歩により、この工程を省略したものが「山廃(やま はい)」と呼ばれます。

(写真:東北銘醸株式会社提供)

5 醪(もろみ)造り 材料からアルコールを作り出す

3で麹、4で酒母が出来ると、いよいよ仕込みです。水・蒸米・麹を酒母のタンクに入れると、米のデンプン が麹によって糖分に代わり、更に酵母によって糖分がアルコールへと変わります。同じ容器の中で糖化と発酵 が進むことを「並行複発酵」と言い、東アジアで作られる酒特有の技術です。この状態を「醪(もろみ)」と 呼びます。 また、一気にすべての材料を入れてしまうと、うまく発酵しないため、何度かに分けて入れます。これを「段 仕込み」と言います。

6 上槽(じょうそう) 白濁色の醪から透明な酒を搾る

熟成した醪を搾り、酒を取り出します。機械を使って搾るやり方、漕(ふね) という圧縮機を使い搾るやり方、袋を吊るして滴らせるやり方があり、酒の 種類に応じて使い分けます。醪を搾りきったあとに残るものが、栄養を豊富 に含む「酒粕」で、料理用・美容用に利用されます。

(写真:菊勇株式会社提供)

この上槽を行うと、酒蔵の入り口に「杉玉」が飾ら れます。杉玉は、諸説ありますが、奈良県にある大 神(おおみわ)神社の酒造りの神様にあやかり作られ 始めたとされます。杉の葉を使うのは、大神神社の ご神体である三輪山(みわやま)に多く生えているか らだといいます。杉玉が酒蔵に下がると、新酒の完 成はもうすぐ、という事です。

7 滓(おり)引き・濾過・火入れ 不純物を取り除き、菌を殺菌する

上槽した酒にはまだ米粒や酵母が混ざっている為、これらを 取り除くため、タンクに10日程置き、浮遊物を沈殿させま す。更に、上澄みを取り出し、更に濾過を行い、色・雑味を 取り除きます。最近は「無濾過」を売りにする日本酒もあり ます。 火入れは、濾過を行った酒に残る酵素・酵母を殺菌し、品質 を安定させる事です。瓶に詰めた後に加熱する場合と、液体 の状態でヒーター加熱するやり方があります。火入れをしな い酒は「生酒」と呼ばれます。その後、瓶詰を行い、飲食店・販売店などへ出荷されます。長期熟成酒・古酒は貯蔵されます。

(写真:楯の川酒造株式会社提供)

以上 酒田市資料館 第195回 雛と酒田の美酒より